総選挙が行われるイギリスは、これまで多くの移民を受け入れてきた歴史のある国ですが、その「政策」が選挙の争点の一つになっています。
南部アフリカ・ナミビア出身のヴェムさん(仮名・38)。2年前、難民としての保護を求め、11歳の娘とともにイギリスに逃れてきました。
ナミビア出身 ヴェムさん(仮名)
「私の話は6歳の頃にさかのぼります。叔父による性的虐待が始まった時です」
ヴェムさんの育った地域では、性暴力の被害は「身内の恥」とされ、声を上げることも許されないまま、被害は数十年に及びました。
ナミビア出身 ヴェムさん(仮名)
「逃げなくてはと思ったのは、自分の娘にも被害が及び始めた時です」
警察に訴えたものの捜査は行われず、告発したことで身内から命を狙われるようになったといいます。
ナミビア出身 ヴェムさん(仮名)
「もし、まだナミビアにいたら、私の命はなかったと思います。(Q.なぜですか?)叔父はどんな手を使ってでも、私を殺したでしょうから」
そんな安全な場所を求め逃れてきた「難民申請者」が、いま懸念しているのが…
イギリス スナク首相
「不法入国者は出ていくべきです。私が再び首相に選ばれたら“ルワンダ計画”を実行します」
「ルワンダ計画」とは、非正規の方法で入国した人々をアフリカのルワンダへ強制的に移送するというもので、ルワンダ政府は多額の経済援助と引き換えに受け入れる予定です。
背景にあるのは“難民申請者”の増加。その数はおととし、およそ10万人にのぼり、うち半数近くは小型ボートで海を渡るなど、非正規の方法で入国しようとした人々です。
こうした「不法入国」を抑止するため打ち出された「計画」ですが、きょう行われる総選挙で“歴史的な大敗”が予想される与党・保守党が保守層にアピールするための目玉政策にしているのです。
一方、最大野党・労働党は「選挙に勝てばルワンダ計画は取りやめ、国境警備を強化する」としていて、まさに世論を二分しています。
「ルワンダ計画」賛成派
「不法移民は受け入れるな。私たちが困窮するだけだ。すでに住宅は不足し、医療も逼迫しているのに」
「ルワンダ計画」反対派
「ヨーロッパの他の国々では、もっと多くの難民を受け入れている。彼らはここにいていいと思う。犯罪者ではないのだから」
一方、イギリス最高裁は「ルワンダで難民申請が適切に判断がされず、難民が母国に強制送還されるおそれ」を指摘。ヴェムさんもその恐怖を抱えています。
ナミビア出身 ヴェムさん(仮名)
「娘も『ルワンダ計画』を知っています。状況がよくなることを願って、大丈夫だと言い聞かせています」
ヨーロッパをはじめ、世界各地で「移民排斥」の動きが広がる中、イギリスもいま、岐路に立たされています。
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